いかなる入稿方法を選択する場合でも、何らかの事故が起きた場合にはきちんと原因究明する姿勢がもっとも大事なことだ。
その主題は、作業者の責任追及ではない。
ワークフローのどこに弱点があるのかを発見し、改善点を洗い出すことである。
CMS上の責任分担や表現意図を明確化するうえで、CD-RやDVD-Rなどの書き換え不能なメディアでの納品をまずは標準とするべきである。
しかし、デジタルカメラの高画素化により、いまや取り扱うデータ量は増えるばかりであり、こうした光磁気メディアでは時間効率が悪くなって来てしまった。
一方で、ハードディスク(以下HDD)の低価格化、インターネットの高速化により、HDDを直接納品、ウェブ上の配信サービスやサーバーによる納品も日常のものとなった。
書き換えが可能なメディアであるだけにいずれの場合も、仕様書による確認はこれまで以上に重要になったし、忘れてはならない基本である。
また、多重のバックアップも必ず必用である。
HDDが壊れるものであることはもちろんのこと、光磁気メディアでさえ、錆によってデータを読めなくなることがあるからだ。
光磁気メディア、HDDなどの現物納品の場合は湿気、熱、磁気、振動といった環境要因に留意するだけでなく、納品先に対応するドライブやインターフェースがあるかどうかを確認することも基本事項である。
一方、ウェブ上の配信サービスやサーバーでは、通信の安全性が最も重要である。
いかなるデータも外部に漏らしてはならない。
上で紹介しているWebDAVやActiveAssetsは、その強固なセキュリティやワークスタイル、納品先に合わせて賢く選んでもらいたい。
デジタル入稿の際、製作側に対して行っておきたいのは、デザイナーとのコミュニケーションである。
対個人の場合はまだ話し合いと融通で自由な取り決めが可能だが、会社となると、独自のワークフロー、金銭的/人員的都合もある。
ワーキングスペース、入稿方法の確認はもとより、アプリケーションのCMS設定、デザイナーのマシン環境まで確認することが必要だ。
できれば現地まで足を運びたい。
使用しているモニタキャリブレータ、モニタの白色点設定(キャリブレータを使用していても、白色点設定を忘れているケースが多い。あなたも忘れていませんか?)、色見本出力機器、CMYK/RGBのワーキングスペース、使用アプリケーションとバージョン、CMS設定、色指定に何を使っているか(DICかPANETONEか)などを確認しておくと非常に参考になる。
ことに色指定の基準を聞いておくことは、デザイナーとのコミュニケーションの上で確実な方法のひとつだ。
もちろん、人間としてのコミュニケーションも忘れてはならない。
実はこれが、ただひとつの大事なことといってもよい。
デジタル以前にもそれはあったよ、と思うかもしれないが、CMSを導入することで、写真家はやっとデザイナーとの共通言語を手に入れたのである。
コミュニケーションの密度はより高まるはずだ。
どちらが欠けても本は出ない。 CMSを技術論だけでなく職種を繋ぐ共通言語であると捉えたい。
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