比較されがちな「Aperture」と「Lightroom」、しかし、この2つはコンセプトも利用目的も全く違う。
OSの土台から革新を行う「Aperture」と、新しい画像形式DNGの標準確立を狙う「Lightroom」、いずれも野心的なソフトウェアだ。
デジタルカメラの使用が前提となった商業写真の世界では、膨大な撮影カットのハンドリングが最大の課題となって最後まで残されていたが、超高速ブラウザソフト「フォトのつばさPro」や「Adobe Bridge」の登場、各カメラメーカー専用ソフトのパフォーマンス向上で、それまでの不満は解消されつつある。
そんな中で全く新しいコンセプトで登場したのが、Adobe Photoshop LightroomでありApple Apertureだ。
デジタルカメラのデータを直接ハンドリングするソフトであるという点は同じであり、Rawデータから直接画面表示・編集しながらRawデータそのものは変更しない「非破壊編集主義コンセプト」という点も似ている。
しかし使用する上でも機能においても、両者は大きく正確の異なるソフトである事は銘記しておいてほしい。
例えてみれば同じ目的で開発されたPCなのに、使い勝手がかなり異なるMacとWindowsのようなものだ。
最大の特徴は高機能なプロ用ソフトでありながら、ベテラン写真家であってもコンピュータ操作に不慣れなデジタルビギナーが使いやすいように工夫が凝らされていることだ。
クリックやダブルクリックで期待する反応が得られること、憶えやすいショートカットで作業効率を上げる工夫、日本の写真関係者が理解しやすいよう練り上げられた機能用語、同じ機能がメニューの文字やアイコンボタンやキー操作、マウス操作など様々な方法で実行される点等々、画像処理系の専門アプリケーションでここまで優しく丁寧に作り込まれた製品はいままで存在しなかった。
トリミング、回転、ゴミ取りレタッチ(スポッティング)以外の画像修正や画像合成は行わないと割り切れば、Adobe Photoshopの助けを借りずに撮影ワークフローとして必要な作業を、すべて行うことができる(銀塩時代のフォトグラファーの大多数が行っていた作業工程のすべてを)。
さらにプリント出力やプレゼン用スライドショー作製、WEBギャラリー作製など高度なデータ出力作業を、ビギナーでも簡単に間違いなく実行できるのが大きな特徴だ。
そしてPhotoshopファミリーの一員としてLightroomで画像管理をしながら、Photoshopでしかできない画像処理はPhotoshopで行う連携作業も補正パラメータを共有維持しながら実行可能だ。
JPEG、TIFFファイルの補正処理も16bit処理でRawデータに準ずる精度を保持できるのもApertureと同様だ。
写真のアーカイブ化など画像管理機能においてはApertureに一目置くことになるが、商業写真分野においてクライアント毎にカタログを構築してセキュリティを高めるなど、ライブラリ運用の自由度が高いので、実用性は充分だ。
最新バージョンでは便利なデータの受け渡し機能を含んだ、極めて実用的な画像管理機能が組み込まれている。
Apertureは多機能なソフトだ。
多数の機能を最初から使い切るのは難しいが、1つか2つの機能を使うだけで十分もとが取れる。
iPhotoを使っているならライブラリーの移行も簡単だ。導入のハードルは決して高くない。
最初に画像管理機能から説明しよう。
画像管理とは馴染みない言葉だが、itunesの楽曲管理機能の素晴らしさは知っている読者も多いだろう。
iTunes的管理機能をプロ写真家向けにしたのがApertureの管理機能だ。
Apertureの画像管理の圧倒的利点は「スマートアルバム」。
「スマートアルバム」は検索条件に一致する画像を自動収集する「フォルダ」のようなもの。
一般的な画像管理ソフトは、フォルダ内の画像を拡大して見ているにすぎない。
「スマートアルバム」は見た目は「フォルダ」のようだが、実際は保存できる検索条件だ。
だから画像のコピーや移動をしなくても新たに検索条件に一致する画像が追加されたり、検索条件が変更されれば自動的に「スマートアルバム」の内容は変更される。
また、「ルーペ」や「フルスクリーン」など写真のセレクトが素早く行える機能も充実し、もっとも先進的な画像管理を実現している。
次にRAW現像と画像編集を見てみよう。
AperureがサポートするデジタルカメラのRAW形式はけっして多くない。
しかし、AperutrelはJPEGをRAWのように破綻なく編集できる。
JPEGはYCbCrという形式で圧縮され、開いた後8bit画像として展開されてるという仕組みを持つ。
この仕組のままだと、開く前に芳醇なワインだったものを、開く時、水にして画像編集しているようなもので階調破綻が起こった。
AperutreはJPEGをワインのままで編集するので、どれだけ画像編集しても階調破綻しない。
ホワイトバランスのミスや露出の失敗を恐れてRAWで撮影していた写真家も、Apertureを使えばJPEGで自信を持って撮影できる。
またApertureは、JPEG画像を16bit画像として書き出せるので、他社製ソフトで画像編集を行いたい場合も破綻なく編集ができる。
「Light Table」は、写真展や出版物のシミュレーションができる機能だ。 銀塩時代にプリントサイズを変えたり、序列をつけて並べるなどしてアイデアを煮詰めるといった、写真家が普通に行ってきた作業をデジタルで実現するものだ。
他に、Webページを検索条件に応じて自動作成し画像の更新にも自動対応する「スマートWebギャラリー」や、写真集をレイアウトし印刷をオンラインで注文する機能も持つ「ブック」などがある。
さらにコンタクトシートやプリント、スライドショーもある。
このように多数の機能を持つがゆえ、Apertureとは何か一言で言えないもどかしさがあるが、たくさんの画像を登録し、じっくり付き合い始めれば必ず真価がわかるソフトだ。
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